ケアステーション モーニング カンファレンス
創傷処置 ②爪下血腫・陥入爪について

 

日時:2004年1月16日 8:00~9:30AM
場所:ケアステーション
参加者(敬称略):村木、黒澤、戸塚、長田、中尾、網田、丸山
■爪の解剖(図1) *爪の構造は下図のようになっています
図1
  ⅰ)爪甲
  一般に「爪」と呼ばれている部位で、角質層や毛髪と同じケラチンでできています。
  ⅱ)爪床
  爪甲の下に隠れた部位であり、爪甲と密着した表皮からできています。この爪床の表皮は、爪甲が伸びるとともに、指先に向かって移動しています。
  ⅲ)爪母
  毛髪が毛母細胞で作られているように、爪甲は爪母の爪母細胞で作られています。すなわち爪がはがれても、爪母がしっかりしていれば爪は再生するという事です。
■爪の役割
指先の保護
物を掴みやすくする
  爪がないと・・・ 指先に力がうまく伝わらないので物をつまみにくい、
    持ちあげにくい、ボールが投げにくいなどいろいろな弊害がでてきます。

■爪下血腫■
■メカニズム
 
外部からの持続的な圧迫ストレスや介達外力によって、爪の下に出血が起こる事です。爪の下で起きた出血は血液の行き場がなくなり、爪と皮膚の間の内圧が上昇して痛みが誘発されます。
■原因
  ⅰ)回避できない原因
  ・スパイクなどのシューズで踏まれる。
・指の上に物を落としてしまう。
・ドアに指をはさむ。
ⅱ)回避できる原因
  ・シューズが常に爪にあたり、持続的圧迫ストレスがかかる。
■好発部位
 第1位 足趾第1趾
  ⇒他の指に比べ厚みがあり、靴の中で圧迫力が加わりやすく、さらに体重を支持したり力がかかる部分であるため起こりやすい。
 第2位 足趾第2趾
  ⇒第1趾より第2趾が突出している足、圧迫力が加わりやすい足(図2)やハンマートゥー(槌趾)のように変形がある足などで起こりやすい。(図3-1・2)
 第3位 足趾第5趾。
  ⇒痛みが感じにくい為気づきにくいが、第5趾もきつい靴などによる局部の圧迫によって起こる。
☆プチ雑学その1☆
  第1趾が第2趾より突出している足はエジプト型。
  第2趾が第1趾より突出している足はギリシャ型。
☆プチ雑学その2☆
  第2趾が長いとハンマートゥーになりやすい。
  ハンマートゥーの定義:足趾に発生する変形で、通常は基節骨と中節骨の関節面が変形(図3-1)し、背側に槌状に屈曲し伸展できない状態の事をいいます。中節骨と末節骨(図3-2)との間にも発生しやすいです。
競技別の発生機転をみると・・・
 陸上では・・・ 靴との圧迫で第1趾・第2趾に多く起こりやすい。
 バスケでは・・・ 踏まれたり、強い着地の衝撃で起こりやすい。
 野球では・・・ 1)バットを握っている指にボールが衝突して起こる。
(バントの失敗など)
  2)内野手がゴロを捕球しそこねた時、グラブに添えた側の指にボールが当たり起こる。
  
■対策・予防
・足にあった靴を履く。(大きすぎても小さすぎても良くない。)
・ストレスがかかる部分に緩衝剤(パッドなど)を入れる。
爪を正しく切る。
☆ディスカッション ☆
  Q. 外反母趾では爪下血腫になるケースが多いのでは?
  A. 外反母趾では足趾にかかる圧迫力よりも、足関節が回内し、拇指が内転位になりやすいので爪下血腫は起こりにくい。
■血腫を抜く際の判断基準
 ⅰ)痛みの有無
  痛みがなければ感染・爪に傷がつくなどのリスクを避ける為に抜かないほうが良いでしょう。
    ・痛みがないということは・・・
    ⇒血液がさほど溜まっていない
    ⇒爪床・爪母と爪甲の間の内圧がそれほど上昇していない。
    ⇒炎症が少ない。
 ⅱ)血腫の範囲
  血腫が爪の1/3以上に拡がっていたら抜いたほうが良いでしょう。
☆血腫を抜かないでいると爪が浮いてくるのでは?☆
血腫を抜かなかった事によって爪が浮いてくる事はありません。
■爪を抜かざるを得ない場合の判断基準
  (*基本的には爪は抜かないほうが良いのですが、爪がぐらついてきたときの判断基準という事です。)
  ⅰ) 血液の溜まる範囲
    爪甲部の遠位2/3は問題ありませんが、近位1/3(半月の部分)に溜まっていると血液が固まってしまい爪の組織もボロボロと崩れてくるため、早期に血腫を抜いて圧迫し、固定しておくべきです。
    ↓そのままの状態で爪を伸ばすと・・・
   
爪母・爪母細胞の状態が悪くなり不正な形の爪がはえてくる可能性が高くなり、再生までに時間がかかってしまいます。
  ⅱ) 爪母・爪母細胞の状態
  爪母・爪母細胞の状態が悪いと、生えてくる爪が変形してしまう(よれたり腐食しているなど)可能性が高いので、早期に血腫を抜いて圧迫をし、固定しておくべきでしょう。
■血腫の処置の仕方
  ⅰ) クリップなど先端の尖った物やドリルを使用します。
クリップなどを使用する場合は先端部分を赤くなるまで熱し消毒を行います。
ⅱ) 血腫の中心部または圧をかけて痛い部分
(血腫がより溜まっている部位)に、ゆっくりと刺入します。
(早く刺入すると爪を通り越して爪床を傷つけてしまい痛いので慎重に行いましょう。)
ⅲ) 感染防止の為消毒して保護。
ガーゼなどを爪の大きさに切りとり爪に貼り、テープで圧迫をかけます。
・ガーゼは血液を吸収する素材を使用。(ガーゼ・スキンケア)
・テープは薄く伸縮性がある物を使用。(DMテープ)
☆プチ雑学その3☆
爪が黒くなる原因は?
・ 栄養不良
・ 爪母の部分にホクロや傷などによる色素がある場合。
爪は1日にどれ位伸びるのか?
・ 手は1日0.1mm 足は1日0.05mm
■陥入爪■
■メカニズム
側方からの持続的な圧迫により、爪の側縁部が内側に丸まり皮膚に食い込んでしまう状態をいいます。
■原因
ⅰ)先天的・病的
ⅱ)爪が薄くて柔らかい
ⅲ)皮膚が過剰に柔らかく潤っている
ⅳ)深爪
ⅴ)シューズの摩擦(スパイク・ヒールなど)
■好発部位
足趾第1趾(足趾の長さ・厚さ・機能で1番多い)
*痛みとなってでるのは足趾第1趾ですが、他の指でも陥入爪が起こっている場合もあります。
■症状
・ 炎症期・・・発赤・腫張・疼痛
・ 化膿期・・・皮膚に爪が陥入して膿が貯留
・ 肉芽期・・・赤い肉が盛り上がってくる
■対策・予防
ⅰ) 深爪に注意。(爪の切り方に注意しましょう)
1)図4-① 黄線部を少し残して先端をカットします。
2)図4-②,③ 側縁部が鋭角にならないように斜めにカットします。
3)仕上げにヤスリをかけて切り口をなめらかに丸めます。
図5のように削り残しがあると、爪がくい込む原因になります。
ⅱ) 外力に対しては緩衝剤でカバーします。
ⅲ) 補水・補油を行います。
ⅳ) 爪が薄い人は爪の表面にコーティーング(マニキュアなど)を行います。
☆プチ雑学その4☆
  「マニキュアは爪が呼吸できなくなるから良くない。」と言われますが、全くそんな事はなく、爪は元から呼吸をしていません。爪に良くないのはマニキュアを落とす際に使用するリムーバーで、特に「アセトン」入りのリムーバーは爪を乾燥させやすく、爪を溶かしてしまう成分が含まれている為爪が割れる原因になります。リムーバーはノンアセトンを使用する事をお勧めします。

 

ここがポイント!!
この部分をしっかり削る!
肉をよけてヤスリをかける。
■処置の仕方
  ⅰ) 爪がくい込んでいる時はカットするかヤスリで削ります。(図5)
   

この際、食い込んでしまっている肉をよける為にテープで逆方向に引っ張てあげると処置が行いやすい上に食い込み防止にもなります。(図6)
*角質層(肉芽組織)が硬くなってしまった場合は削りましょう

  ⅱ) 綿花をコヨリ状にしたものを、爪と皮膚の間に入れます。
  (ピンセットを使用し爪の下に入れると良いでしょう。)
  ⅲ) 綿花のコヨリを取れにくくする為、水絆創膏を塗っておきます。
  (コロスキン・リキッドバンテージなど)
    *水絆創膏を使用する時は、コヨリの大きさはある程度の厚みが必要となります。(なぜなら水分を吸収してしまうと、コヨリがつぶれてしまい、爪と皮膚の間に隙間ができなくなってしまうからです。)
Ⅳ) プレー中にコヨリがとれないように、再度水絆創膏にてコーティーングを行います。
Ⅴ) テープにて保護を行います。
  (テープが直接爪に付いてしまうとはがす時に痛いのでガーゼを爪と同じ大きさにカットしたものを入れると良いでしょう。)
☆ 下記に陥入爪の写真をご紹介致します☆

 



  (
書記担当:長田 瑞絵)