ケアステーション モーニング カンファレンス
創傷処置③ 創傷(キズ)の処置

 

日時:2004年3月29日 8:00~9:30
場所:ケアステーション
参加者(敬称略):村木、黒澤、戸塚、大久保、長田、網田、富田
今回は、創傷(キズ)を負った場合の処置に関して、どのようにしたら良いかを討論しました
■「皮膚」とは・・・
・体の中と外界を隔てるもので解剖学上では臓器として分類されています
・体の中の成分が外に漏れるのを防ぎかつ細菌などによる感染から体を守っています
  創傷処置①皮膚の解剖参照
■「創傷」とは・・・
・皮膚組織が損傷されたもののこと(開放性損傷)をいいます
(皮下組織全体の損傷のことは「挫傷」といい、打撲や捻挫があります)
☆プチ雑学☆
 ・創とは皮膚の連続性が保たれていない場合をいいます→深いきず
 ・傷とは皮膚の連続性が保たれている場合をいいます→浅いきず
■ 創傷の分類
  ■ 擦過創又は擦過傷(擦り傷)
・転倒などによる強い皮膚の摩擦により生じます
・砂やアスファルトの粉が創の中に入り込んでいることがあります
・傷そのものはそれ程深くありませんが、広い範囲で表皮がなくなってしまうため、神経の末端が露出して痛みが強く、透明な組織液がにじみ出てくることがあります
・傷の表面が凸凹で、そこに付着した細菌がとれにくく化膿しやすい状態になります
  ■ 切創(切り傷)
  ・刃物やガラスなどで切った場合で切り口がシャープな創です
  ・組織の挫滅が少なく、化膿や皮膚壊死の可能性は低いといえます
  ・出血や痛みが伴います
  ■ 割創、裂創(深い切り傷)
・顔面衝突など強い外力により生じ、創傷面は不規則で、周囲の組織も傷つく場合が多くあります(コンタクトスポーツ)
・見える部分の創の状態だけで軽率に判断しないようにします
・皮膚が身体から引き裂かれた時に生じ多量の出血を伴います
  ■ 刺創(刺し傷)
・鋭い物体(陸上のスパイクなど)が組織を貫通した場合です
・血液中に破傷風菌が入り込み、破傷風感染を起こす危険性があります
・刺創や重症な裂創は、直ちにドクターに治療を依頼すべきです

■ 出血対策 
  ・創傷により血管の破綻を起こした結果として、出血が生じます(破綻性出血)
  ・人間の血液量は体重あたり約80ml(体重の1/12~1/13 )で、一時にその1/3以上を失うと生命に危険がありますので、早急に出血対策(止血)をする必要があります
・ スポーツの現場において出血した選手がいた場合、最大の理由として血液を介しての感染を防止するため、止血が完了するまで競技に復帰できません(一部のスポーツを除き)ので、トレーナーは迅速かつ確実な止血処置が要求されます
☆止血法 ☆
・原則としては、外傷による外出血に対して、まず第1に圧迫をすることと、次に出血部位を心臓よりも高い位置にあげることで、止血を試みます
  ■ 直接圧迫法
・出血部位に直接ガーゼや布を当て、その上を手で強く圧迫する方法です
  ■ 間接圧迫法
・ 出血部位より心臓に近い動脈のある点(止血点)を手や指で強く圧迫して血流を止める方法です
この方法は頭部と四肢には有効です
  ■ 直接・間接圧迫併用法
・直接圧迫法だけでは止血できない場合に、間接圧迫法をあわせて使用する方法です
  ■ 止血帯法
・ 止血帯を使って一時的に抹消の血流をとめてしまう方法です
・この方法は最終手段として用い、その際止血帯は、直接創傷部に触れないように注意します

☆ 止血のメカニズム ☆
・ 創傷部では、下記に示すような作用により止血が行われていきます
⇒第1段階:機械的な血管の収縮
破損を受けた血管は、神経作用によりまず収縮を起こして内腔を狭め、機械的に出血量を少なくします(血流を緩やかにする)
⇒第2段階:血小板の凝集
血管内皮細胞の損傷部(すなわち欠損部)に血液成分の血小板が付着凝集をしてその部位を覆います(一次止血)
⇒第3段階:凝固因子の作用
12個の凝固因子が関与する凝固作用(凝固因子の連鎖反応)が働き、線維素網が形成される(血栓)と完了します(二次止血)

■ スポーツ現場での創傷処置(止血の前に)
  接触プレーの多い少ないに限らず、スポーツでは創傷を受けることは日常的であり、その際止血の適切な処置を素早くおこなうことが大切ですが、止血を試みる前にすべきことがあります
  ■ 創傷部位の確認
・まず、創傷部位を確認します
・頭部創傷の場合、傷口がわかりにくい場合もあるので、顔を下に向かせ、水で洗い流しながら冷静かつ確実に損傷部位を見つけるようにします
・多量の出血の場合、選手が動揺することがあるので、まず気持ちを落ち着かせることが大切です(頭部・顔面部・手部は血管が多く、小さな創でも多量に出血する事がありますが、落ち着いて慌てないようにします)
・ 四肢であれば創傷部位を心臓よりも高く挙げるようにします
  ■ 汚染防止(選手)
・グラウンドでは創に土砂などの異物が混入することがあります
⇒この場合、水道水などの流水を用いて創部とその周囲を数分間洗浄し、土砂を洗い流します
・傷口をこすらないように、水圧程度かガーゼのような軟らかい物で表面を少し押すように異物を取り去ります
⇒異物を除去する事ばかりを考えていると、傷口を広げたり異物をさらに内部まで押しやる事になります
⇒異物は化膿や外傷性のイレズミの原因になります
・出血がそれ程多くない場合、少しの間そのまま放置し、出血によって傷口を洗滌することもその後の化膿を防ぐ一つの方法です
・ 汚れた手や汚れたもので傷にふれないようにします
  ■ 汚染防止(トレーナー)
・ 傷の手当をするときは、必ず手を洗い、使い捨てグローブを使用します
傷病者の血液がついてしまった場合はできるだけ早く流水で洗浄するようにします
・ 特に自分の手に傷がある場合、素手で傷病者の血液に触れないように注意します

■スポーツ現場での創傷処置(部位別創傷処置例)
①顔面部の裂創(切創)
・ 相手選手とのコンタクトなどにより受傷します
・ 顔面部は不規則な凹凸があるため受傷しやすく、とくに眼窩周囲、眉毛部分、顎の周囲が好発部位です
・ 眼瞼部は血行に富み、皮膚が薄いため、物があたると切創になり出血しやすい部位です
・ 眼角部(目尻)の深い裂創はかなりの出血を起こすことが多く、外傷性眼瞼下垂や瘢痕形成を起こすことがあります
・ 涙管の裂創は出来るだけ早く手術をしないと、涙の流路が閉じてしまい、涙があふれる後遺症となる場合があるので注意が必要です
 
処置例
止血を実施します
創傷部周辺の水分を取り去ります(テープを貼るため)
創傷部の両端を指で左右に広げてピンと張り、面をきれいに合わせます


綿棒にタップリ吹き付けたスプレー糊を創傷部周辺に塗りつけます〔写真上
(リキッドバンデージも有効〔写真下〕)



非伸縮性のテープ(ステリストリップ〔写真上〕・スキンクロージャーなど)を使用し、引っ張らずに貼っていきます(伸縮性テープを使用すると創傷部の可動性が大きくなり再出血や傷跡がきれいにくっつかないことがあります)〔写真下
テープは創傷部に対して垂直方向に、緊張を分散させるために何枚か貼ります
水平方向にもテープを貼ります
最後に保護用のテープを貼ります(伸縮性テープなど)
②鼻出血
・ 鼻道には鼻孔から1cmくらいの所にキーゼルバッハ部位という毛細血管がたくさん集まっているところがあり、(鼻アレルギーや鼻道の乾燥など)ほとんどはこの部位からの出血です
・ コンタクトを生じる可能性の高いスポーツでは、鼻への衝撃によって出血が生じることがあります。また頭部挫傷によって生じることもあります
処置例
頭を前方に傾けて(顔を下にして)座らせ、顎を引き、口で息をさせます

飲み込むと後で嘔吐する原因となるので、のどに流れ込む血液は口から吐き出させるようにします


出血している側に、丸めたガーゼか綿球を入れ(あまり奥の方まで入れないこと)、鼻の外側から鼻の真ん中に向かって鼻腔を指で挟むように圧迫します
指の下にガーゼをあてがって挟むと容易に圧迫ができます→写真
ガーゼも綿球もないときはティッシュを固めに丸めて入れます


鼻腔内に残った綿花や綿球の繊維を取り去ると、再出血を来たす場合もあるので、できるだけガーゼを使用するようにします
出血が止まらないようであれば、鼻を冷却します→写真


それでも出血が止まらなかったり、鼻の変形が見られるようであれば、耳鼻咽喉科の医師の診察を受けるようにします
間違った鼻出血の対処法(世間一般に語り継がれている?)
・ 上を向いて首筋をトントンと叩くようなことを行う人もいますが、血液が咽喉の方へ逆流して気分を悪くすることがありますのでやめましょう→写真
・ 鼻をかむと、粘膜を刺激して再出血をする可能性もありますし、鼻骨骨折の場合腫れがひどくなる危険性もあるためできるだけ鼻をかませないようにします

■スポーツ現場での創傷処置(競技別)
出血を伴う創傷が頻発するスポーツの代表格としてラグビーがあげられます
ラグビー競技では、以下のようなルールの下、トレーナー(メディカルサポーターとして)が受傷した選手のケアを迅速に行うこととなっています
第6条A(7)
「競技区域に入ることが許されている医務心得者がプレーヤーをみている間でも、あるいはプレーヤーが負傷のためタッチラインの外に出ようとしている間でも、その負傷が軽度であればプレーを続けることができる。軽度の負傷が起きた際のプレーの継続は、レフリーが判断し、またレフリーはいつでもプレーを中断する権限を有する。」
・ メディカルサポーターは、負傷者を確認したら、フィールド内に躊躇することなく入って良いことになっており(他の競技との相違点)、プレーヤーよりケガの状況を聞き取ります
メディカルサポーターは、レフリーの一部を代行しゲーム進行の円滑化をはかる為、速やかに処置できるかを判断し、時間のかかる場合やテーピングが必要なとき、又はドクターの判断や処置が必要なときは、グランドの外に出して処置をするようにします
処置例
・ 出血しているプレーヤーはプレーすることができないルールのため、出血しているプレーヤーを確認したら、すぐに止血処置が基本です



・ 試合の際には、進行の妨げにならないよう、グラウンド外で・・・(1)スクイズボトルの水で洗い流して受傷部位を確認した後、(2)ガーゼやタオルで止血を試み、(3)ワセリンや軟膏をつけて、(4)ガーゼを被せ、(5)テーピングなどで保護・固定をしてフィールドに戻します

・ 試合後には、シャワーを浴びるなどして受傷部位を洗滌した後、消毒・保護処置をします


・ 創傷が広範囲のものや程度の重いものは消毒の後に二次感染防止用の軟膏をつけることもあります
・ 深い切り傷(特に顔面部の創傷)は、ドクターに縫合処置を施してもらうこともあります


・ 試合時のドクター帯同がある場合には、表皮をスキンステープラーでとめる事もあります
⇒この方が縫合糸で縫うよりも傷痕がきれいになることが多いようです


・ コンタクトスポーツのため顔面部の深い切り傷、手足の擦過傷は、打撲を伴うものも多いため、洗滌および消毒の後に、アイシングを実施することもあります